近年、労働基準監督署(以下労基署)の臨検調査の実施が注目されている。実施件数は年間15万件とも言われる。臨検調査で重大な法違反が発覚すると、企業名公表など社会的信用を失うことにもつながる。経営者は労基署の臨検調査にどのように対処すればよいのか。このコラムでは社会保険労務士が労基署臨検調査の概要について詳しく解説する。

【目次】
①臨検調査は拒否できない
②労基署臨検調査の種類
③逮捕・送検
④まとめ

①臨検調査は拒否できない

労働基準監督署の臨検調査。多忙な毎日を送る経営者には厄介な問題だ。できることなら、調査自体を拒否したい。日ごろの労務管理について苦情を述べたい。そんな気持ちは多くの経営者が持つところ。

しかし労働基準監督署の臨検調査は拒否できない。法律に明確に規定がある(例:労基法101条)。不用意に拒否すると日時の指定を受けず強制的に臨検調査が実施されるケースもある。不用意な初動を取らず社労士等の専門家に良く相談の上、適切な対処をして頂きたい。

②労基署臨検調査の種類

臨検調査は一般的には事前通知に基づいて行われる。しかし事前通知を行うことで問題の把握が充分にできないことが想定される場合(例として証拠書類の急造、隠匿)には、事前通知なしで突然監督官が事業所へ立ち入る場合がある。この場合も事業主は立ち入りを拒否することができない。

当事務所の顧客の例でもある日突然監督官が事業所へ訪れ、タイムカードの確認から調査を始めた例がある。日ごろの労務管理と書類の保管を適切に行う必要があることを改めて思い知らされる。

③逮捕・送検

通常の行政庁の立ち入り調査と異なり、労働基準監督官には警察官に類似した司法警察員の地位が認められている。つまり強制捜査、逮捕、送検などの権限だ。

場合によっては労働基準法違反で逮捕、といったケースも想定される。経営者は日ごろから労働関連法(労働基準法をはじめとする諸法令)について充分な知識を持って経営に臨む必要があると言える。

④まとめ

人事労務は経営の根幹を成すものであるとはいえ、人事労務を司る労働諸法令は極めて幅広く、複雑である。過去の判例を紐解くだけでも多大な時間と労力が必要だ。

そのような経営者のために法律の専門家が存在する。当該分野専門家としては予防法務が社会保険労務士、紛争法務が弁護士である。両者の特性を良く理解したうえで、適切な労務管理に取り組んで頂きたい。

【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
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