本人で出来る裁判手続き、少額訴訟。このコラムでは60万円以下の訴訟(少額訴訟)について解説する。

このコラムを読むと分かること

・小額訴訟の概要が分かります。
・自分で訴訟を起こす際の全体の流れが理解できます。

【目次】

①少額訴訟の特徴
②少額訴訟における証拠と証人
③判決と仮執行
④小額訴訟まとめ

①少額訴訟の特徴

事業運営上で困るのが小口債権の貸し倒れ問題である。数百万円に上る請求の場合は、弁護士費用を支払ってでも回収したいという強い意識が働くが、10万円、20万円の金銭債権の場合、弁護士への報酬支払の方が高くつく。

そのような場合に活用したいのが、専門家に頼らず本人で出来る少額訴訟である。

少額訴訟は、60万円以下の金銭債権について、原則1回の裁判で判決が下される。通常の裁判に比べて、様々な時間短縮の工夫がなされているため、中小企業経営者にとっては心強い味方であると言える。

②少額訴訟における証拠と証人

少額訴訟を起こすにあたって、当方の主張を裏付ける十分な物的証拠と、その事情をよく知る証人の確保が必要である点は、通常訴訟と同様である。

つまり簡易な裁判方式であるとはいえ、当方の意見を主観に基づいて主張するだけでは、当方に有利な判決が下されるものではないのである。

逆に言うと少額訴訟は1日の審理のみで判決が下されるため、訴状作成の段階ではより綿密な証拠集めが必要と言える。

裁判当日には、訴えの事情を良く知る者を証人として参加させることが出来る。物的証拠を補うスタンスで、当方の主張を補う証言をしてもらうことが出来れば、より裁判が有利に働くことになる。

③判決と仮執行

少額訴訟の結果、当方の主張を認める判決が下された場合、被告は判決に基づいて債務を支払う義務がある。しかし、被告がその判決を無視して、支払いを拒絶する場合、原告自ら強制執行を行う必要がある。強制執行の対象は被告の持つ預貯金や給与債権である。

この場合、被告がどの銀行の支店に口座を保有するのか、またどの会社に勤務しているのかについては、裁判所が調査することはない。つまり原告自らが調べる必要があるのだ。

万一、銀行支店名や勤務先がわからない場合、少額訴訟で勝訴した意味がなくなるため、提訴の段階で強制執行を見越した調査が必要である。

④小額訴訟まとめ

中小企業の債権管理上、最も困るのが小口の不良債権。少額の債権といえども、長期放置の挙句貸し倒れが続くようでは、社内風紀上も問題を生じる。少額訴訟は弁護士や司法書士が介在しないため、経営者自ら(または担当者)が手続きを行う必要がある。日ごろから十分な制度理解をしておきたいところだ。

【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
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