労働基準法および関連法の守備範囲は極めて広い。起業家は1人でも雇用した時点から使用者としての責任を負うため一定レベルの知識習得が必要だ。このコラムでは特に介護・障害福祉事業に焦点を当て、労働基準法の入り口を解説する。

【目次】
①介護・障害福祉事業の法定労働時間と休憩の特例
②登録ヘルパーの有給休暇
③就業規則の作成と届出義務は?
④契約社員(有期契約)制度を使う場合の注意点
⑤まとめ

①介護・障害福祉事業の法定労働時間と休憩の特例

一般的な事業とは異なり、介護・障害福祉事業は労働基準法により法定労働時間と休憩に特例が設けられている。10名未満の介護・障害福祉事業の場合、法定労働時間の上限は週44時間となる(通常は40時間)。

また休憩に関しては労使協定の締結なしに、一斉付与の原則が免除される。つまり交代制で休憩を取ることができるのだ。現場の業務状況に応じて柔軟な勤務体制を敷くことを検討したい。

②登録ヘルパーの有給休暇

介護・障害福祉事業のうち、特に訪問介護事業所などでは「登録ヘルパー」という勤務形態が存在する。常時事業所に出社するのではなく、利用者の希望時間に応じて勤務する非常勤の職員だ。

これら登録ヘルパーに対しての有給休暇はどうなるのかを示したのが本項だ。労働基準法では週の労働時間が30時間未満、かつ週の労働日数が4日以下の場合、フルタイム職員にの有給休暇に対して比例的に減じた日数を与える、「有給休暇の比例的付与」が適用される。表にすると以下の通りとなる。(厚生労働省)

有給化の比例的付与

③就業規則の作成と届出義務は?

就業規則は常時10名以上が勤務する事業所で作成届出義務が生じる。この場合の「常時」とは常勤職員を指すのではなく、非常勤職員(いわゆるパート、アルバイト含む)も1名でカウントする点に注意が必要だ。

また仮に10名未満の事業所であっても、個別労働契約ではカバーできない事業所内のルールを策定するためにも就業規則の作成が望ましいと言える。

④契約社員(有期契約)制度を使う場合の注意点

介護・障害福祉事業は比較的小規模な開業が多い業種だ。財務基盤の弱い開業直後には、長期雇用を約束することに幾分かのリスクが生じる。この場合に検討をお勧めしたいのが有期雇用契約だ。

有期雇用契約は一定の期間(例:1年)経過後に、自動的に雇用契約が終了する。もちろん双方の合意で更新もできる。

事業悪化に伴う整理解雇の労働トラブルを避けるためにも、開業直後のしばらくの期間は有期雇用契約で短期間雇用契約を繰り返し、事業が軌道に乗ったタイミングで無期雇用に転換する制度をお勧めしたい。この転換では雇用助成金の受給も可能である。

⑤まとめ

介護・障害福祉事業では、開業直後から一定数の人員を雇用する義務がある。この点に十分配慮して、社内の人事労務体制を構築したい。当事務所では介護・障害福祉事業の立ち上げに特化したパッケージサポートを準備しているので、合わせてご参照頂きたい。

【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)