選択制確定拠出年金(401K)のデメリット

選択制確定拠出年金(401K)に掛金を拠出し、標準報酬月額が下がると、社会保険料等が削減できるメリットがあります。

しかし一方で健康保険の傷病手当金などは低下した標準報酬月額をもとに支給額が決定されるため、選択制確定拠出年金(401K)に掛金を拠出し、標準報酬月額を下げることで、いざという時の支給額が減少してしまうのです。

一般的にはこの事実をもとに選択制確定拠出年金(401K)のデメリットと呼ばれています。しかし、本当にこれらはデメリットと言えるのでしょうか。下記では、比較的利用可能性の高い2つの給付に絞って選択制確定拠出年金(401K)のデメリットを徹底検証します。

・健康保険の傷病手当金
・健康保険の出産手当金

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健康保険の傷病手当金と選択制確定拠出年金(401K)の検証

1.傷病手当金の支給額

傷病手当金の支給額は1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額です。標準報酬日額とは、その人の標準報酬月額を30で割った額です。

例えば、標準報酬月額が30万円の人は、30万円÷30=1万円が標準報酬日額です。その3分の2が支給額のため、1万円×2/3=6,667円が1日あたりの傷病手当金です。

※50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は切り上げ

2.傷病手当金の支給要件

傷病手当金は「連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった」場合に支給されます。

重要なポイントは、会社を休んだ日が連続して3日間なければ成立しないことです。連続して2日間会社を休んだ後、3日目に仕事を行った場合には、「待期3日間」は成立せず、傷病手当金は支給されません。

選択制確定拠出年金(401K)_傷病手当金

3.選択制確定拠出年金(401K)を利用しない場合と利用した場合の比較

例えば、給料30万円の人で選択制確定拠出年金(401K)を利用していない人を考えてみます。
この方は、上記のように6,667円が1日あたりの傷病手当金です。

一方、同じ給料30万円の人が、選択制確定拠出年金(401K)を利用し、月額2万円の拠出金を積み立てていたとします。

この方の標準報酬月額は28万円です。そして、28万円÷30=9,333円が標準報酬日額です。その3分の2が支給額ですので、9333円×2/3=6,222円がこの人の1日あたりの傷病手当金です。

ということは、6,667円-6,222円=445円が1日あたりの選択制確定拠出年金(401K)のデメリット分と計算できます。

4.本当に大きなデメリットなのか?

傷病手当金は連続して3日間(待期)の後、4日目以降の欠勤から支給されます。みなさんは、年間どのくらいの頻度で病気やけがによって会社を休まれるでしょうか。

もし、10年間のうち1回、連続7日(待期3日を含む)病気やけがで欠勤したとしても、445円×4=1,780円のデメリットです。

しかし、上記の例では、選択制確定拠出年金(401K)の利用により、社会保険料だけでも1か月あたり2700円程度の削減効果があります。10年間削減しつづけると、社会保険料だけで32万円以上の削減効果(メリット)があります。

このように現実的に検証した場合、選択制確定拠出年金(401K)は、傷病手当金の支給を受ける際の大きなデメリットとはなりません。

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健康保険の出産手当金と選択制確定拠出年金(401K)の検証

1.出産手当金の支給要件と支給額

出産手当金は出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内で会社を休み、給与の支払いがなかった期間を対象として支給されます。

支給額は、1日につき、標準報酬日額の3分の2に相当する金額です。

選択制確定拠出年金(401K)_出産手当金

2.選択制確定拠出年金(401K)を利用しない場合と利用した場合の比較

例えば、給料22万円(標準報酬月額22万円)の女性が選択制確定拠出年金(401K)を利用していなかった場合を考えてみます。

この女性は、4,889円が標準報酬日額です。(220,000÷30×2/3)そして、産前産後合わせて98日休んだとすると、この女性の出産手当金は479,122円です。

一方、同じ給料22万円の人が、選択制確定拠出年金(401K)を利用し、月額2万円の拠出金を積み立てていたとします。

この女性の標準報酬月額は20万円で、標準報酬日額は4,445円です。(200,000÷30×2/3)同じように、98日休んだとすると、この女性の出産手当金は435,610円です。

ということは、479,122円-435,610円=43,512円が選択制確定拠出年金(401K)のデメリット分です。

ところが、この女性の場合、社会保険料だけで、1か月2,746円分の削減ができます。したがって、43,512円÷2,746円≒15.8か月。つまり16か月目以降からは、選択制確定拠出年金(401K)利用によってメリットが発生します。

選択制確定拠出年金(401K)利用後、比較的早期の出産であっても大きなデメリットにはなりません。

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労務専門コラム デメリット検証編

>>①選択制確定拠出年金(401K)導入によって将来の公的年金は減る?
>>②選択制確定拠出年金(401K)のデメリット 傷病手当金・出産手当金(今このページです)
>>③選択制確定拠出年金(401K)のデメリット 失業給付
>>④私の資産は大丈夫?選択制確定拠出年金(401K) 関係機関の倒産
>>⑤加入者が死亡したときの確定拠出年金
>>⑥転職・退職 どうなる?私の確定拠出年金(401K)
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【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)