有給休暇請求には使用者の承認が要らない

使用者と労働者

1.労働争議参加目的の有給休暇

林野庁職員Aは他庁の労働争議に参加するために有給休暇取得。所属署長はその有給休暇を認めず、欠勤扱いにし、賃金を控除しました。

最高裁は職員Aの有給休暇を認めた事件です。

2.有給休暇の法的性質

林野庁白石営林署事件
最高裁 昭和48年3月2日第二小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

①労働基準法39条1項、2項により労働者は当然に有給休暇の権利を得る
②同条における「請求」の語は「指定」の意味に他ならない
③つまり、使用者の承認の概念を容れる余地はない
④労働争議のための一斉休暇は同盟罷業に他ならず有給休暇ではない
⑤しかし、有給休暇の取得目的は本来自由であり、
⑥労働基準法の関知しないところである
⑦他の事業所の労働争議参加は、有給休暇の成否に影響しない
⑧他の事業所への参加は、労働者の所属事業所の運営を妨げるものでもない
⑨よって有給休暇は適法に成立している

3.有給休暇の性質を正しく理解する

本判決によって、有給休暇の性質が明らかにされました。

【有給休暇の性質】
①「請求」→「承認」により成立するものではない

②取得目的は原則として関係ない(例外は次の判例で)
③他の事業所の労働争議参加は、所属事業所の運営に影響を与えない

経営者よりも、有給休暇などの勤怠管理を行う直属上長が理解しておくべき判例であると言えます。

大阪の社会保険労務士_就業規則・社労士顧問ページ

 

ストライキ参加目的の有給休暇は認められない

使用者と労働者

1.有給休暇日の労働争議参加

J社に勤務する労働者Aは、11月28日に年次有給休暇を請求。そもそもその日には労働争議が行われる予定がなかったが、予定変更により28日労働争議が実施されることになりました。

Aは年次有給休暇を維持しつつ労働争議(ストライキ)に参加し、積極的役割を果たしました。J社は当日の賃金をカット。労働者AはJ社を相手取り、未払い賃金を求めて訴訟を起こしましたが、最高裁はその支払いを認めませんでした。

2.先に取得していた年次有給休暇の転用もNG

津田沼電車区事件
最高裁 平成3年11月19日第三小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

①労働者Aはたまたま先に取得した有給休暇日を使い、職場を離脱した
②このような職場離脱は有給休暇に名を借りた同盟罷業である
③よって有給休暇として扱うことはできない

3.年次有給休暇の意義

前述の「林野庁白石営林署事件」で示されたのと同様、ストライキ参加目的の有給休暇は認められないと言う考え方が改めて示されました。

あくまでも年次有給休暇は、正常な事業運営を脅かすものであってはならないという原則を明らかにする判例であると言えます。

大阪の社会保険労務士_就業規則・社労士顧問ページ

 

使用者に認められた年次有給休暇の時季変更権

使用者と労働者

1.長期休暇に対する時季変更権

報道J社に勤務する労働者Aは長期の年次有給休暇を請求。専門的知識の高いAに長期休暇を認めると事業の正常運営に支障が出るとしてJ社は一部の休暇時季を変更しました。

しかし労働者Aはその変更を無視して渡航。J社はけん責処分と賞与を減額しました。労働者Aは上記処分の無効を訴えましたが、最高裁はJ社の措置を支持しました。

2.事業への支障を蓋然性で判断

時事通信社事件
最高裁 平成4年6月23日第三小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

①長期休暇の代替者を確保するのは困難であり、
②休暇により予想される業務量の程度、
③代替勤務者の確保の可能性、
④同時期の休暇指定者の人数、
⑤これらを正確に予想することは困難である。
⑥よって、事業運営の有無と程度は蓋然性※による判断が避けられない
⑦これについて、事業者に合理的な範囲で裁量権を認めざるを得ない
⑧J社の下した判断は合理的であり、時季変更は適法である

※蓋然性≒確率

3.使用者判断は合理的基準で

有給休暇取得により、事業への支障が出るか否か。それを本判決では、「蓋然性≒確率論」で判断せざるを得ないケースとして認めました。

ただし、その場合でも使用者の判断が合理的であり、労働者に一定の配慮が必要です。

大阪の社会保険労務士_就業規則・社労士顧問ページ

 

産後休業の不利益取扱い

使用者と労働者

1.産後休業者に対する賞与不支給

T社では賞与の支給基準として、出勤率90%という規則がありました。労働者Aは産後休業をしたため出勤率が90%に満たず賞与の支給対象外に。

AはT社を相手取り、賞与の支給を求めて訴訟を起こしたところ、最高裁はその請求を一部認めました。下記内容は判例中の部分抜粋です。

2.公序良俗と就業規則

東朋学園事件
最高裁 平成15年12月4日第一小法廷判決 一部抜粋

最高裁の判決要旨は下記のとおりです

①産後休業は労働基準法で認められた権利である
②賞与対象者を出勤率90%以上に限定し、
③その出勤すべき日に産後休業日も含めることで、
④産後休業の取得を差し控えさせようとする場合、
⑤出勤率90%以上の規則は公序良俗に反し無効である

3.労働基準法に基づく権利の侵害

判例では、労働基準法において補償されている権利を、事実上抑止する社内の規則を公序良俗違反として無効にしています。

直接的に権利を侵害する場合だけでなく、間接的に権利を侵害することに一定の留意が必要です。

大阪の社会保険労務士_就業規則・社労士顧問ページ

 

労務専門コラム 残業代・労働時間・休日編

>>①労働時間とはいったい何か?
>>②残業代(時間外労働手当)の支払い義務の全貌
>>③変型労働、みなし労働と残業の関係
>>④36条協定・管理者・歩合の残業問題
>>⑤専門業務型・企画業務型裁量労働、フレックス制と残業代
>>⑥有給休暇の時季指定と変更 (今このページです)
>>このカテゴリ(残業代・労働時間・休日編)のトップへ戻る

 

事務所へのお問合せ

 

【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)