このページでは労働基準法89条で規定する就業規則について解説しています。

就業規則の基礎知識

1.従業員10名以上の事業所には就業規則の作成・届出義務

労働基準法第89条では、「従業員10名以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署への届出の義務がある」と定めています。

ここでいう10名には正社員・パート社員の区別を問いません。つまり正社員5名、パート社員5名の事業所であれば労働者が10名となり就業規則の届出義務が生じます。また、パート社員が正社員よりも短い時間で勤務している場合でも、1名としてカウントします。派遣社員の場合は派遣元(派遣会社)の事業所によって人数カウントされるため、派遣先企業の人数には入りません。

人数は事業所ごとでカウントするため、35名の会社でA事業所(12名)、B事業所(18名)、C事業所(5名)の場合、AB事業所には就業規則の作成・届出義務がありますが、C事業所にはありません。

就業規則の作成・届出義務に違反した場合、つまり事業所の従業員が10名以上なのに、作成・届出をしていない場合、30万円以下の罰金刑が適用されます。

2.事業所が複数ある場合の就業規則の届出方法は?

事業所が複数ある場合、それぞれの事業所単位でパート社員等を含めて計算し、10名以上であれば就業規則の作成・届出義務が生じるのは前述の通りです。

では、従業員数が10名以上の事業所を複数、例えば10箇所、20箇所以上保有する会社は、全ての事業所で、所轄の労働基準監督署へ届出しているのでしょうか。そのような場合の利便性を考えて、本社一括届出という仕組みが設けられています。

一括届出制度は、一括して届け出る本社の就業規則と本社以外の事業場の就業規則が、同じ内容であるものに限り利用することができます。事業場の数と同じ部数の就業規則と意見書を用意してください。ただし、同じ監督署管内に複数の事業場がある場合、就業規則は監督署ごとに1 部を提出すれば結構です。この場合も意見書は事業場ごとに1 部必要です。

本社以外の対象事業場の名称、所在地及び事業場を管轄する監督署名を記した一覧表を作成してください。この手法により、各事業所の就業規則の作成・届出義務を若干軽減しているのです。

3.パート社員がいるときの就業規則は?

パート社員だけに適用される就業規則を設けることも認められています。例えば、賃金規定や休暇規定。正社員とパート社員で賃金や休暇の条件に差を設けることがある場合、それらの規定を分離すると、その管理が便利です。

一般的にはこのような場合、規則体系は次のようになります。

・就業規則(全員適用)
・正社員賃金規定、正社員休暇規定(正社員のみ適用)
・パート社員賃金規定、パート社員休暇規定(パート社員のみ適用)

すべてをひっくるめて、労働基準法89条に言う、「就業規則」となります。作成・変更には事業所の代表労働者の意見書(後述)が必要ですので、例えばパート社員賃金規定を定めるに当たっても、その事業所全体を代表する労働者の意見書が必要となります。

大阪の社会保険労務士_就業規則・社労士顧問ページ

 

就業規則の記載事項

1.就業規則の絶対的必要記載事項

就業規則には、「それを記載しなければ、そもそも就業規則が無効」となる絶対的必要記載事項が定められています。絶対的必要記載事項は次の通りです。チェックしてみましょう。

□始業及び終業の時刻
□休憩時間
□休日・休暇
□交替制の場合には就業時転換に関する事項
□賃金の決定、計算及び支払の方法
□賃金の締切り及び支払の時期
□昇給に関する事項
□退職に関する事項(解雇の事由を含む)

2.就業規則の相対的必要記載事項

一方で、「事業所にそういう規則があるならば、就業規則に記載が必要」となる相対的必要記載事項が定められています。相対的必要記載事項は次の通りです。チェックしてみましょう。

□退職手当に関する事項
□臨時の賃金(賞与)
□最低賃金額に関する事項
□食費、作業用品などの負担に関する事項
□安全衛生に関する事項
□職業訓練に関する事項
□災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
□表彰、制裁に関する事項
□その他全労働者に適用される事項

 

就業規則の作成手続き

1.労働者代表の意見書

就業規則の作成・変更には、労働組合または全労働者の過半数を代表するものの意見書が必要です。意見書はその名の通り、「意見書」であり、「同意書」ではありません。極端な話ですが、「・・・・の就業規則について意見を求められたが、同意しない」と言う意見書さえあれば、就業規則の届出義務は果たすことができます。

しかしこの場合は単に労働基準法で求められる届出義務を果たしたに留まり、有効な就業規則として対象労働者の労働条件を規定するとは認められないでしょう。大半の中小企業には労働組合がありません。よって、就業規則の届出には事業所ごとの全労働者(パートを含む)の過半数代表者を選ぶ必要があります。

労働者代表を選ぶ際には、次の2点が必要です。

・監督・管理の地位にある者でないこと。
・労使協定の締結等を行う者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。

忘年会や親睦会の酔いに乗じて、勢いで選定すると錯誤無効や信義則違反を主張される可能性があるため、注意が必要です。白日の下に、正々堂々と趣旨を説明し、労働者代表選任議事録を残すことをお勧めします。

2.労働者に周知されていない就業規則は無効

適正に労働者代表を選び、意見書を得て労働基準監督署に届け出た就業規則。しかし、その後労働者に周知しないと、その就業規則は無効です。周知とは全ての労働者がいつでも見ることができる環境を作ることをいいます。

紙で印刷したファイルを、事業所に備える方法が一般的ですが、そのファイルがどこにあるか分からないようでは周知義務を果たしたとは言えません。また、一定の役職者に対して閲覧申請をしなければ、閲覧できないようでも周知義務を果たしたとは言えません。インターネット上にファイルを公開する手法も認められますが、アクセス環境にない従業員がいる場合は、同じく周知義務を果たしたとは言えません。

3.就業規則の変更で従業員全員の労働条件を変えることはできる?

適正に労働者代表を選び、意見書を得て労働基準監督署に届け出た就業規則。周知も万全とします。しかし、その就業規則により、もともとの労働条件を改悪された労働者がいる場合、その就業規則は有効であると言えるでしょうか?

このようなケースを制定して、労働契約法9条では次の通り規定されています。(要約)

「労働者の同意なしに、就業規則の変更によって労働条件を不利益変更することはできない。」

例外規定が労働契約法10条です。(要約)

「以下の場合に限っては、労働者の同意なしに就業規則の変更によって労働条件を不利益変更できる。」

・変更後の就業規則を周知する
・変更内容が合理的である
・労働組合等との交渉が合理的である

 

大阪の社会保険労務士_就業規則・社労士顧問ページ

 

労務専門コラム 就業規則編

>>①就業規則の基礎解説(このページです)
>>②36条協定(サブロク協定)の基礎解説
>>③年次有給休暇の基礎解説
>>④割増賃金の基礎解説
>>⑤解雇の基礎解説
>>⑥就業規則は個別労働契約にどう影響する?
>>⑦就業規則の変更で労働条件を不利益変更
>>⑧従業員に対する損害賠償請求、会社に対する発明の対価請求
>>⑨セクハラ・パワハラの指針判例
>>⑩労働者のプライバシー保護はどこまで?
>>⑪機密保持義務、競業避止義務の限度
>>⑫ライバル企業への転職、引き抜き
>>このカテゴリ(解雇・懲戒処分編)のトップへ戻る

 

事務所へのお問合せ

 

【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)