企業による過度な監視が違法行為に

使用者と労働者

1.共産党従業員に対する孤立化政策

共産党員である労働者Aに対して、孤立化政策を採ったK社。

最高裁はK社の取扱いを不当行為であると認定しました。

2.限度を超えた監督権は違法

関西電力事件
最高裁 平成7年9月5日 第三小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

①労働者Aらは共産党員またはその同調者ではあるが
②現実には企業秩序を破壊し混乱させる恐れがあるとは言えない
③にもかかわらずK社は労働者Aらの思想を非難し
④Aらと接触・交際をしないように他の従業員に働きかけ
⑤Aらを孤立化させる政策を採った
⑥さらにAらを尾行し、個人ロッカーを開錠撮影した
⑦これら過度な政策はAらの自由な人間関係を形成する自由を侵害し、
⑧名誉を毀損するものである

3.職場の秩序維持と従業員の人格保護

K社の採った行為は許容限度を超えていたと判断されました。

判例からは、一方的に従業員の人格保護が重要視されるのではなく、バランスが重要であるとも読み取ることが出来ます。

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本人の同意なくHIV抗体検査

使用者と労働者

1.本人に無断でHIV抗体検査

警察学校に入校したA。警察学校はAに無断でHIV抗体検査を行いました。結果陽性。警察学校はAに退職を迫ります。

Aは警察学校らを相手取り提訴。裁判では損害賠償が認められました。

2.プライバシー権の侵害と違法な公権力の行使

HIV抗体検査 警視庁警察学校事件
東京高裁 平成15年5月28日判決

東京高裁の判決要旨は次のとおりです。

①HIV感染のみで警察官の職務が全うできないというわけではない
②警察官と言えど、その勤務態様は様々であるので、
③必ずしも
HIV抗体検査の必要性があるとは言えない
④また本人の同意なく行った検査はプライバシー権を侵害する
⑤警察学校はAに過度に不安をあおり、自主退職に誘導した
⑥これらの行為は違法な公権力の行使とも言える

3.検査の必要性と本人の承諾

HIV抗体検査に関する基本的な考えが示されています。検査の必要性と本人の承諾。これらがない場合の抗体検査が違法であると判断されています。

十分な検討を行わずに検査を行ったことに対する批判的な判例であると言えます。

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部下の電子メールを、上司が無断で閲覧監視すると・・・

使用者と労働者

1.社内電子メール 上司による閲覧

社内電子メールで、上司Yのセクハラ捏造をやり取りしていた労働者A。上司Yは労働者Aの電子メールを無断で閲覧し始めました。

労働者Aはプライバシー保護をめぐってYを提訴。労働者Aの訴えは退けられました。

2.従業員のプライバシー保護権は相当程度低減

F社Z事業部 電子メール閲覧事件
東京地裁 平成13年12月3日判決

東京地裁による判決要旨は次のとおりです。

①同社には社用メールの私的使用に関する指針がなかった
②しかし社用メールにおける従業員のプライバシー保護は相当低減されるべきである
③また誰が監視する立場にあるか、その態様などを総合判断し、違法性を認定すべきである
④上司Yは監視者として適任とはいえないが、他に該当者がいない
⑤Yが当初単独で行った監視は、相当であるとは言えないが、
⑥事後、担当部署に依頼して監視を続けたこと適当であり、
⑦労働者Aの権利を侵害するとは言えない

3.電子メールの私的利用禁止と監視

会社の利用管理のもと、社用で使用すべきメール。そのメールを私的に用いた場合のプライバシー保護を、どこまで認めるかが争点となりました。

私的利用の禁止および監視の旨を、事前に規則で定めておくと良いですね。

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【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)