限度を超した転職時の引き抜き行為

使用者と労働者

1.一斉引き抜きの違法性

R社に勤務する労働者Aは、同業他社Bへの転職を予定しつつ、R社の従業員をいっせいに引き抜きました。

R社は労働者Aと同業他社Bを提訴。東京地裁はAとBに対する損害賠償責任を認めました。

2.雇用契約上の誠実義務違反

ラクソン事件
東京地裁 平成3年2月25日判決

東京地裁の判決要旨は次のとおりです。

①引き抜き行為の是非は個人の転職の自由と企業利益の保護の調整問題である
②従業員の引き抜きのうち、単なる転職の勧誘に留まるものは違法とは言えない
③引き抜かれる側の幹部従業員によって行われたとしても直ちに誠実義務違反とは言えない
④しかし社会的相当性を欠き、背信的方法で行われた場合は、雇用契約上の誠実義務違反である

【雇用契約上の誠実義務違反の判断基準】
・退職時期を考慮しているか
・事前の予告を行ったか、内密か
・会社の運営に配慮したか
・引抜が一斉かつ大量ではないか

5.労働者Aの行為は上記を総合考慮し、雇用契約上の誠実義務に違反し、
6.B社も共同してその損害を賠償すべきである

3.引き抜き行為の違法性

判決では、引き抜きが違法性を帯びる基準を示しました。

そして、その基準に収まる行為は単なる転職の勧誘であるとして認め、基準を超えるものは雇用契約上の誠実義務違反としました。

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【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)