労働基準法の本質~労働基準法の立法趣旨

1.民法の私的自治と労働基準法の関係

資本主義社会では私的自治が原則です。私的自治とは「誰とどのような契約をしても自由」というルールを指します。 しかし、労働者と使用者には、情報力・資金力・交渉力の面で圧倒的な差があるため、私的自治の原則に一定の修正が加えられています。

つまり私的自治を原則とする民法の例外(特別法)として、労働基準法が作られているのです。民法に優先的に適用されます。

2.労働基準法は最低基準を規定

労働基準法は民法の私的自治の原則にも侵されない、労働者の最低限の権利を守っています。 重要なのはあくまでも労働者の最低限の権利という点であり、決して「労働基準法を根拠として、労働条件を最低限に落としてもよい」という権利を会社に認めたわけではありません。

また労働者の最低限の権利を保証するために、労働基準法には次の三つの効力が認められています。

①強行的効力 →労働基準法に満たない労働条件は無効とする
②規範的効力 →無効となった部分は労働基準法のラインまで押し上げる
③罰則規定  →労働基準法に違反した場合、会社には刑事罰が科される

以上が労働基準法の立法趣旨です。

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労働基準監督署と逮捕権

1.司法警察職員

身体の自由を奪われる「逮捕」。現行犯逮捕の場合には、一定の条件のもとで一般人にも犯人を逮捕する権限が認められていますが、現行犯逮捕以外では、司法警察職員にしか逮捕権は認められていません。

司法警察職員の代表例は警察官です。しかし警察官以外にも逮捕権が認められるケースがあります。それが特別司法警察職員です。特別司法警察職員の代表例は、麻薬取締官、海上保安官そして労働基準監督官です。税務職員に逮捕権は認められていません。

つまり、労働基準法に違反すると、罪刑に応じて警察官ではなく、労働基準監督官に逮捕される可能性があるのです。昨今、いわゆるブラック企業経営者または経営幹部の逮捕のニュースが流れますが、この場合の逮捕は労働基準監督官により行われています。

2.労働基準監督署の仕事

労働基準監督署の仕事の本質は、企業に対する労働基準法遵守体制の監督にあり、労働者の保護ではありません。よって、個別労働紛争が発生している場合で、労働基準法違反に該当しない場合には、労働基準監督署は労働者に対して単なる助言を行うに留まります。

つまり、この場合は民事不介入の原則に基づき、「問題解決は当事者同士で、場合によっては訴訟によって行う」というのが、労働基準監督署の基本姿勢です。

しかし、労働者の個別労働相談に労働基準法違反が含まれる場合は別です。例えば長時間の残業が生じているが36条協定が未提出の場合、残業手当が支払われていない場合などです。この場合は、労働基準監督署は当該企業に対して、立ち入り調査を行い、その是正を勧告します。

3.どのようなときに立ち入り調査が行われる?

労働基準監督署の立ち入り調査のきっかけの大半は内部告発を含めた社内外からの情報提供です。その他一般抽出による方法、過去に指導暦のある会社の追跡調査などの場合もあります。

また、立ち入り調査の主な調査対象、解雇退職、賃金引下げ、割増賃金などがです。調査の際には、次の法定書類の提出が義務付けられるため、日頃から注意して管理しましょう。

①就業規則(賃金規定を含む)
②労働条件通知書または雇い入れ通知書
③36条協定(時間外労働、休日労働協定)
④労働者名簿
⑤賃金台帳
⑥タイムカードまたは出勤簿  など

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労務専門コラム 労働紛争編

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【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)