派遣契約解除に基づく派遣労働者解雇

使用者と労働者

1.有期派遣契約中の解雇

派遣元P社で派遣労働者として登録したAは、派遣先Q社で就労。しかし、Q社がP社との派遣契約を解約したため、P社は契約期間途中でAを解雇しました。

AはP社を相手取り、解雇無効と契約期間内の賃金を求めて提訴したところ、宇都宮地裁はこれを一部認めました。

2.有期契約解雇は無期契約解雇よりも厳格

プレミアライン事件
宇都宮地裁 平成21年4月28日決定

宇都宮地裁の決定要旨は次の通りです。

①有期雇用契約中の解雇は、労働契約法17条、民法628条により制限される
②つまり、やむを得ない事由がある場合に限り認められる
③これは期間の定めなき雇用契約における解雇権濫用法理よりも厳格である
④解雇権濫用法理とは、客観的合理性、社会通念上相当性を欠く場合の解雇無効である
⑤P社の整理解雇が有効かどうかは整理解雇の4要素の総合考慮が必要である
⑥P社は解雇以外の措置を取らず、
⑦他の派遣先斡旋などの努力を行わず、
⑧解雇であるのに合意解約であるかのように信義則に背く体裁を繕っている
⑨よって本件解雇は明らかに無効である

3.契約期間中の解雇に関係する条文等

決定文で引用された部分を整理しておきましょう

労働契約法17条(契約期間中の解雇等)
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

民法628条(やむを得ない事由による雇用の解除)
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

【整理解雇成立の4要件】
ⅰ 人員整理が企業の合理的運営上やむをえない必要性に基づくこと
ⅱ 配置転換、転勤などの解雇努力義務をしてもなお余剰人員が発生すること
ⅲ 解雇対象者の選定が客観的・合理的な基準に基づくこと
ⅳ 労使間の協議、説明義務を十分に果たしていること

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繰り返された有期雇用契約の更新と雇い止め

使用者と労働者

1.有期雇用契約と雇い止め

T社で就労する労働者Aは、2ヶ月の有期雇用契約が23回更新された末、雇用契約の更新を拒否されました。(いわゆる雇い止め

Aは労働者の地位確認のためT社を相手取り提訴。最高裁はAの訴えを認めました。

2.実質的には解雇と同じ

東芝柳町工場事件
最高裁 昭和49年7月22日第一小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです

①労使ともに景気変動等がなければ当然契約が更新されるべきであると考えていた
②よって形式上は2ヶ月更新型であるが、実質的には期間の定めのない雇用契約と言える
③つまり形式的には更新拒否であるが、実質的には解雇であるため、
④解雇が有効に成立するかどうかの検証が必要である
⑤P社の就業規則では解雇に関する事由が列挙されている
⑥その中に有期雇用契約の満了が掲げられているがこれを適用することはできない
⑦よって、同条文を根拠とした解雇は効力を有しない

3.有期雇用契約 雇止め制限に対する布石

有期雇用契約の更新が繰り返され、実質的には期間の定めがない状態となっている雇用契約。

この雇用契約を、更新拒否を理由に解約することは出来ないと示した最高裁の判例です。

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臨時職員に対する解雇権濫用法理

使用者と労働者

1.5回更新後の雇い止め

H社の臨時工Aは2ヶ月の有期雇用契約を5回更新したのち、業務上の理由で更新を拒否されました。

最高裁はH社による雇い止めを有効と判断しました。

2.本工と臨時工における解雇の差異

日立メディコ事件
最高裁 昭和61年12月4日第一小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

①本件では5回の更新により期間の定めなき労働契約と異ならない状態が生じたとは言えない
②H社の臨時工は臨時的作業のために雇用されたものではない
③雇用関係は継続が期待されており、
④5回更新されていたため解雇に関する法理が類推される
⑤しかしH社の臨時工は簡易な採用手続きを採っているため、本工員との解雇とは差異がある
⑥H社は事業上やむをえない理由により人員削減の必要性があり
⑦配置転換の余地もなく
⑧雇い止めが必要であると判断されるため、不合理であるとは言えない

3.論点は回数ではなく期待

本判決では、5回の更新により有期雇用契約が期間の定めなき雇用契約に転じたと考えたわけではありません。

そうではなく、仕事の内容が臨時的なものではなく継続的なものであるため、労働者に期待が生じたと考えたのです。

その期待がある以上、解雇権濫用法理が使われるわけですが、それでも本工と臨時工の間には解雇権濫用法理の適用には自ずと差異があると判断しました。

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不更新条項つき有期雇用契約

使用者と労働者

1.不更新条項と雇い止め

リーマンショックにより急激な業績悪化に直面したH社工場。H社は有期雇用契約社員全員を雇い止めすることを決定し、労働者Aは不更新条項を伴う有期雇用契約書にサインしました。

後、Aは雇用契約上の地位を求めて提訴。東京高裁はH社の決定を有効としました。

2.不更新条項を真に理解しているか?

本田技研工業事件
東京高裁 平成24年9月20日判決

東京高裁の判決要旨は次のとおりです。

①不更新条項付の有期雇用契約の締結は、その場で次回の有期雇用契約を放棄するか
②次回終了後の契約更新がない状況に置かれる
③よって不更新条項の効力が意思表示の瑕疵などにより否定されることもあり得る
④しかし本件においては、AはH社の説明を理解し雇い止めをやむ得ないものと受け入れ
⑤不更新条項が盛り込まれた契約書に署名した
⑥また従来の契約と異なり、更新や再入社が全く期待できないことも理解していた
⑦よって本件契約終了に、解雇に関する法理を類推することはできない

3.労働者に契約更新の期待なし

従来までの有期雇用契約とは異なり、不更新条項が盛り込まれ、その理由も労働者が真に理解しているケースです。

このケースでは、労働者側に契約更新に関する期待が生まれる余地が無いため、解雇の制限がかからないとした判決です。

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有期雇用契約?試用期間?

使用者と労働者

1.1年契約と更新拒否

教員としてK社に採用されたAは理事長より、「一応1年契約。その後再雇用を考える」という発言の下、同内容の雇用契約を締結しました。

K社は1年後、Aとの雇用契約更新を拒否。社員の地位を求めてAが提訴したところ、最高裁はAの訴えを認めました。

2.有期雇用契約と試用期間

神戸弘陵学園事件
最高裁 平成2年6月5日第三小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

①使用者が雇用契約に期間を設けた場合、
②その趣旨が労働者の適正を評価、判断するためのものであるときは、
③その期間は雇用期間ではなく、試用期間である
④試用期間は解約権留保付雇用契約であるため、留保解約権の行使の問題となる
  (本件ではAに留保解約権を行使されるような落ち度がない)
⑤本件においては、契約年次に生徒数が増加傾向にあり、
⑥当年次に限って期限付き職員を採用する必要性もなく、
⑦大卒2年目のAは当然長期雇用を望むものであり、
⑧Aは1年後の雇用継続を期待していた
⑨よって労使間に1年で当然に雇用契約が終了する合意があったとは言いがたい

3.目的が労働者の適性判断であれば試用期間

有期雇用契約の趣旨が労働者の適正評価と判断のためのものであるとき、そもそもその契約期間は、期間の定めなき雇用契約における試用期間であると判断されました。

その上で、労使双方に1年雇用契約に対する特別な合意が存在していたかどうかを検証した判例であると言えます。

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【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)