合意退職はいつ成立するか?

使用者と労働者

1.退職願の撤回

O社に勤務する労働者Aは人事部長に退職願を提出、後日撤回しました。

しかしO社は人事部長の退職願受領を持って退職が成立しているとしてAの撤回を拒絶しました。最高裁はO社の対処を認めました。

2.合意解約の成立

大隈鐵工所事件
最高裁 昭和62年9月18日第三小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

①労働者からの退職意思表示に対する受領方法に法の規定はない
②入社時、O社には複数の人物を介在させ、その採否判定をしたが、
③これは人物選択のために1人に決定権を与えにくいからである
④これに対して退職では、状況を把握する人事部長のみに決定させるのは
⑤不合理であるとは言えない
⑥よって人事部長が退職願を受領したことを持って合意解約は成立している

3.辞職と合意解約

労働者からの一方的意思表示により、労働契約を終了させる辞職これに対して労使双方の合意により労働契約が終了するのが合意解約です。

急に社員に辞められると困るので、一般的な就業規則の規定は合意解約になっています。本判決は、合意解約の成立時期とその手段について示したものです。

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解雇の効力はいつ発生するか?

使用者と労働者

1.解雇予告期間・解雇予告手当なき解雇

H社に勤務する労働者Aは解雇予告期間(30日間以上)、解雇予告手当(30日分以上)の措置を受けず解雇されました。(S24年8月)ここでは解雇事由についての争いはないとします。

AはH社を相手取り、解雇予告手当を求めて提訴。しかし第一審中にH社はその全額を支払った(S26年3月)ため、第一審はAの訴えを棄却しました。

控訴審でAは予告手当て支払日までの賃金と附加金を求めました。しかし解雇はS24年8月の通知から30日で成立しているとし、Aの訴えを退けました。

2.解雇の効力が発生する日

細谷服飾事件
最高裁 昭和35年3月11日第二小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

①解雇予告期間、解雇予告手当なき解雇通知は、即時解雇としては無効であるが、
②使用者が即時解雇に固執しない限り、
③通知後30日の期間を経過するか
解雇予告手当ての支払いをした場合、
⑤そのいずれかの時から解雇の効力が生じる
⑥よって本件解雇は昭和24年8月の通知から30日後に効力が生じている
  (H社はその日までの賃金を支払っている)
⑦附加金は裁判所の支払い命令により生じるため、
⑧本件のように全額の支払い義務が完了している場合には発生しない

3.附加金の支払い命令とは?

解雇予告手当、休業手当、割増賃金、有給中の賃金が支払われないとき、裁判所はこれと同額の附加金の支払いを命じることができます。

よって、この支払いが完了しているときは、例えそれが法定期限を過ぎていても、裁判所は附加金の支払い命令を行うことが出来ないと示されました。

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度を過ぎた退職勧奨

使用者と労働者

1.執拗な退職勧奨

(本件は公務員に関する事例ですが、一般企業においても応用できる法理論です)

S市立高校に勤務するAは執拗な退職勧奨を受けました。この行為に対して、Aは精神的損害を被ったとして、S市を相手取り提訴。

最高裁はAの訴えを認めました。

2.退職勧奨はあくまでも説得である

下関商業高校事件
最高裁 昭和55年7月10日第一小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

①退職勧奨は説得の行為であって
②被勧奨者は何らの拘束なしに自由に意思決定し得る
③しかしS市の退職勧奨はAに対して2ヵ月半に11回に及び、
④あまりにも執拗に為されたものと言える
⑤また通常、退職勧奨は年度内で終わるべきところ、
⑥年度を越えて退職勧奨が続けられ、Aに不安を与えた
⑦S市の呼び出し態度なども、常に高圧的だったといえる
⑧よってS市の退職勧奨は不当である

3.退職勧奨の限界を示す

事業運営の必要上なされる退職勧奨。

その退職勧奨が度を越えて、不当であるとされた判決です。

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労務専門コラム 解雇・懲戒処分編

>>①解雇の取扱いを労働基準法・労働契約法で考える
>>②職場外の行為、過去の事件に対する懲戒は可能?
>>③学歴詐称・政治活動・内部告発・所持品検査拒否と懲戒
>>④転勤・職種異動・出向・転籍命令の拒否
>>⑤合意退職または予告なき解雇の成立時期、不当な退職勧奨(このページです)
>>⑥解雇権濫用法理とは何か?
>>⑦整理解雇が成立するための要件
>>⑧有期雇用契約と解雇権の行使
>>⑨セクハラ懲戒処分 妥当判決
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【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)