政治活動の禁止は基本的人権侵害?

使用者と労働者

1.思想・言論の自由と労働契約

思想・言論の自由などの基本的人権と労働契約、どちらが優先するか。

「社(校)内政治活動禁止」という条件の付いた労働契約のもとで雇用された共産党員A。共産主義者の著作を社(校)内で販売した行為の是非が争われ、労働者Aが負けた事件です。

2.労働契約は基本的人権に優先する

十勝女子商業事件
最高裁 昭和27年2月22日第二小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

憲法で保障されている基本的人権も絶対のものではなく、当事者の自由意志に基づく私法関係・契約の制限を受ける

「校内で政治活動をしない」という明確な特約は有効なものであり、また共産主義者の著作を販売する行為は文化活動にも当たらない。(政治活動に当たる)

3.政治・宗教活動が企業統治に及ぼす影響

経営理念により構成員の価値観、行動規範の統一が必要な会社と言う組織に、それとは異なる価値観(例えば政治・宗教)を持ち込むのは組織統一の害となります。

社内政治・宗教活動の禁止規定を再確認するとともに、禁止行為の例を明文化しておきましょう。

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公務員に労働基本権を認めるか?

使用者と労働者

1.公務員の労働基本権(争議行為)

公務員に労働基本権の一部である争議行為を認めることが出来るか?

全農林組合幹部が、組合員に対して勤務時間中の争議行為をあおった事件です。なお全農林とは、管理職を除いた農林水産省と独立行政法人で働く人たちが加入している高い組織率をもった組合です。

2.国民全体の共同利益を優先

全農林警職法事件
最高裁 昭和48年4月25日大法廷判決

最高裁の判例要旨は次の通りです。

公務員に関していうと「使用者は国民全体」とみることができる。また公務員の地位の特殊性と国民全体の共同利益を考えるとき、労働基本権に制限を加えることは合理的である。

その勤務条件は、政治的・財政的・社会的な配慮により、民主国家のルールで決められているので、争議行為で圧力を加えることは出来ない。

仮に職務内容の公共性が低く、争議行為が国民全体の共同利益に影響しない職種の場合、争議行為を禁止する必要性はないが、その場合はそもそも公務員の地位を保有させることの可否を含め、立法で考慮すべき問題である。

3.労働法保護除外の理由を考える

この問題では、公務員が法の保護除外となっている理由を考えることに意義があります。同様の問題に、企業内における管理監督者の労働基準法適用除外規定があります。

表面的に条文の字面を追うよりも、適用除外となっている理由を深く考えると、規則の作成・説明・適用に説得性が増すでしょう。

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労務専門コラム 労働契約編

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>>②派遣労働者の正社員転換
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>>⑦その業務命令は違法?
>>⑧契約社員 5年更新後は無期雇用へ自動転換?
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【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)