契約社員5年で無期転換

 

平成24年の労働契約法改正で、18条、19条、20条が追加されました。 

・18条1項 有期雇用5年無期雇用へ転換
・18条2項 空白(クーリング)期間前後の通算
・19条   有期雇用の更新拒否、雇止め制限
・20条   有期雇用と無期雇用 不合理な条件差別の禁止

ここでは、18条1項2項、19条について詳しく考えてみます。法律の条文記述、構成が理解しがたいため、エッセンスを損なわない範囲で、思い切って条文を省略して記述しています。

 

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労働契約法(18条1項) 有期雇用5年で無期雇用へ転換

1.労働契約法(18条1項 意訳)

有期労働契約を2回以上更新し、通算期間が5年を超える労働者が、使用者に対し現契約期間満了日までに、期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合の労働条件は、現労働条件から契約期間を除いたものとする。

 

2.無期雇用自動転換の意図

労働契約法18条1項で、有期雇用5年の労働者に無期雇用転換権を与える意図は、その不安定な地位を、一定期間内に留めるという意図があります。

そもそも有期雇用契約は、臨時的な業務、期間が限定されている業務で締結されるものですが、景気変動による雇用の調整弁として、偏向的に使われてきた経緯があります。本条項はその偏向に対する一つのアンチテーゼ(警鐘)といえます。

 

3.具体的な事例

1年更新型の有期雇用契約の場合の無期転換権を考えてみましょう。 

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目

 

この事例では、6年目の契約期間(1年)の間に、労働者から使用者に「7年目の初日以降は、無期雇用に転換してください」と申し込むだけで、無期雇用へ自動転換します。使用者は拒否することができません

また無期雇用転換権を事前に放棄させる雇用契約を締結することもできません。

使用者がとり得る対策としては次の2つに限られるでしょう。

①5年の期間成就前に更新拒否
有期労働者が無期転換権を成就させる要件である「5年」経過(成就)前に、次回の雇用契約の更新を行わない合理的な理由を告げて、契約を終了させます。なおこの場合の更新拒否理由については、後述の労働契約法19条(有期雇用の更新、雇止めの制限)にご注意ください。

②5年の期間成就を防ぐために、空白期間を置く
詳しくは次の項で解説します。 

 

(なお本稿での解説は、条文の客観的な解釈を行っているにとどまり、決して有期契約労働者の権利を侵害し、いたずらに短期雇用契約を助長する意図がない旨を事前に申し添えます) 

 

労働契約法(18条2項) 空白(クーリング)期間前後の通算

1.労働契約法(18条2項 意訳)

前項の「5年」を計算する際、次の場合は、空白前の期間は通算しない。

空白期間の直前の労働契約期間÷2(最大6箇月)  空白期間

 

2.空白(クーリング)期間前後の通算

労働契約法18条1項により、有期雇用労働者にとっての「5年」の重みが理解できました。

経営者が取りうる対策としては、この「5年」の成就を何らかの方法で回避することです。そのうちの一つが有期雇用契約の間に、空白(クーリング)期間を置くことです。

 

3.具体的な事例

簡単な例として、1年更新型の有期雇用契約の更新を繰り返している場合で、その途中に8箇月の空白(クーリング)期間を置く場合を考えます。前述の計算式を当てはめると次のようになります。

空白期間の直前の労働契約期間÷2(最大6箇月)  空白期間

12か月÷2=6箇月  8箇月

以上のようになり、空白(クーリング)期間前の有期雇用契約は通算されません

無期転換権の無条件な拡大を回避するためには、有期雇用労働者ごとの契約期間に応じた空白(クーリング)期間を設定することが有効です。

しかし一方で会社の業務状況、本人の生活環境を考えると、意図的に空白(クーリング)期間を設けるのは、現実味を欠くと思われます。そこで検討すべきなのが次の更新拒否・雇止めの問題です。

 

労働契約法(第19条) 有期雇用の更新拒否、雇止め制限

1.労働契約法(第19条 意訳)

使用者は次の場合、有期労働契約を終了(雇止め)できない。

①有期労働契約が過去に反復して更新され、その終了が、正社員解雇と社会通念上同視できる場合

②有期労働者が、契約期間の満了時に更新される期待を抱くことについて合理的な理由がある場合

 

2.有期雇用の更新、雇止め制限の意義

労働契約法18条1項により保障される、有期雇用労働者の無期転換権。経営者が取りうる対策の2つ目は「5年」成就前の雇止めです。

しかし改正労働契約法では、この「雇止め」の制限として、第19条を新たに設けました。

前段で示した通り、「①正社員雇用と同レベルで考えるべき」、「②期待を守るべき」、という二つの制限がかかっています。

 

3.総合的な対策

ここまでの法理論をまとめると、改正労働契約法18条~19条の適用がなされる前段階、つまり、「有期雇用契約の更新の常態化が成立する前」に、対策を打つしか手がないように思います。

この「有期雇用契約の更新の常態化」については、明確な基準がなく、各企業の実情に応じて判断する必要がありそうです。

 

今回のコラムでは有期労働者の地位安定化のための改正労働契約法について解説しました。

有期雇用契約の従業員を多数お抱えの企業にとっては、平成24年改正から5年を迎える、平成29~30年にこの問題が生じると思います。

どのような対策を取るべきか、お悩みの際はぜひ当事務所へご相談ください。

 

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【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)