制裁的な意味を含む業務命令

使用者と労働者

1.規律違反者に炎天下作業命令

労組バッジの取り外し命令に従わなかった労働者A。営業所長は労働者Aに、炎天下での火山灰除去作業を命じました。

労働者Aは所長らに不当行為に基づく損害賠償を請求。最高裁は労働者Aの請求を退けました。

2.業務命令の必要性と過酷さの程度

国鉄鹿児島自動車営業所事件
最高裁 平成5年6月11日第二小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

①所長は上層部から職場規律の確立を命じられていた
②労働者Aは所長のバッジ取り外し命令に違反した
③火山灰除去作業は営業所にとって必要である
④作業自体は社会通念上、行き過ぎとは言えない
⑤違反者を業務から外し、当該作業に就かせたのはやむを得ない
⑥よって当該命令は違法・不当ではない

3.制裁的業務命令

業務違反者に対する制裁の一環として行われる業務命令。これが純粋な報復行為ならば、決して許されるものではありません。

しかしその命令が、事業に必要な作業等を命じており、過酷さの程度も社会通念上許される範囲ならば、違法・不当視できないというのが判決要旨です。

感情に任せて制裁的業務命令を発するのは厳禁です。注意しましょう。

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精神不調の社員に配慮することなく諭旨退職

使用者と労働者

1.精神不調による無断欠勤

精神疾患により被害妄想に陥った労働者A。Aは40日間の欠勤を続けました。

勤務先のH社は十分な調査をすることなく労働者Aを諭旨退職処分に。最高裁はH者の処分を無効としました。

2.病状把握を怠ったH社

日本ヒューレット・パッカード事件
最高裁 平成24年4月27日第二小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

①会社はAに精神科医による診断を受けさせ、
②その上で休職処分等の検討を行うべきであった
③H社はそれをせず、無断欠勤と断定した
④Aの休業は同社就業規則に規定する無断欠勤には当たらない

3.まずは十分な病状把握を

肉体的な傷病と異なり、精神疾患はその判断が難しいと言えます。であるからこそ、逆に精神科医(例えば複数の)を受診させ、その病状を把握することが重要です。

それを怠り、会社側で懲戒処分をすると、判例のような結果に陥ってしまうわけです。

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私傷病を負った社員に対する配置転換の配慮

使用者と労働者

1.私傷病に対する労務の受領拒否

私傷病(職務外の傷病)により従来の業務に従事できなくなった労働者A。労働者Aは事務職での勤務を申し出ましたが、勤務先K社は自宅療養(無給)を命じました。

最高裁はK社の命令を不当としました。

2.他職種への転換の可能性

片山組事件
最高裁 平成10年4月9日第一小法廷判決

最高裁の判決要旨は次のとおりです。

①職種・業務内容の特定なしに雇用された者に、身体的制約が生じた場合、
労務提供の受領を拒否するのは不合理である。
③そのような場合、当該労働者が配置される現実的可能性がある他職種があるならば、
④履行の提供があったとするのが相当である。

3.雇用(労働)契約と就業規則の関係

通常の雇用(労働)契約では、入社時に従事する職種は定められています。これは労働基準法(従事すべき業務の明示)に基づきます。

一方で就業規則には配置転換に関する規定があるはずです。雇用(労働)契約で、他職種への転換がない旨の定めがない限り、私傷病を負った社員に関しては、他職種への転換による業務継続の途を探る必要がありそうです。

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【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)