平成27年、ストレスチェック制度が創設された。事業主はストレスチェック制度の正しい理解と運用で、職場環境の改善を図るべきである。このコラムでは社会保険労務士が制度の概要を詳しく解説する。

 

【目次】

1.増え続ける精神障害の労災請求数
2.ストレスチェック制度とは
3.厚労省ストレスチェック質問票に見る課題
4.まとめ

1.増え続ける精神障害の労災請求数

メンタルヘルス労災認定

表は厚生労働省が発表している精神障害の労災補償件数の推移だ。2000年からの15年間で精神障害の労災請求数、認定件数、自殺者数が右肩上がりとなっている様子が分かる。労働者の心身共の安全を司る労働安全衛生法は時代の流れとともに改正を重ねているが、その多くは精神疾患、パワハラ、職場でのいじめ問題である。

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製造業が日本の高度成長を支えた時代と異なり、第三次産業(サービス業)が台頭して以降は、職場での肉体的な損傷に加えて、精神の疾患が注目されている。そこで政府は平成27年(2015年)ストレスチェック制度を創設し、一定規模の事業所に実施を義務化させることになった。

2.ストレスチェック制度とは

ストレスチェック制度は労働者が質問票に答えていくことで、自らストレスに気付き、専門家である医師等の助言に基づき、就業環境を変更する仕組みである。具体的な制度の概要は次の通りである。

①50名を越える労働者が働く事業所が対象となる。(企業単位ではなく事業所単位)
②一般健康診断の対象となる労働者がストレスチェックの対象となる。
③労働者本人がストレスチェックを希望しない場合は受けなくても支障ない。
④事業主、人事権者がその内容に関与することはできない。
⑤医師等がストレスチェックの結果を本人に通知する。
⑥労働者が希望すれば医師等との面接指導を受けることができる。
⑦面接指導の結果を受けて事業主は就業条件の変更など一定の措置を講じなければならない。

3.厚労省ストレスチェック質問票に見る課題

次のサイトに厚労省が推奨するストレスチェック質問票が開示されている。

http://stresscheck.mhlw.go.jp/

質問票を見ると明らかなように、職場のストレスの原因は主に次の二つに集約されている。

①仕事の量、負荷
②上司、同僚との人間関係

日本の高度成長期を支えた製造業の現場は(極論すれば)、労働者はモノと向き合い、生産性は製造設備の性能と稼働率に依存していた。一方で現代の産業では労働者はヒトと向き合い、生産性が当人の知識や技能に依存する比率が高まった結果であるのではないかと考える。

4.まとめ

産業構造の移り変わりとともに、守るべき労働者の安全が身体そのものから、心を含めた労働者の人権にまで拡大しつつある。我々社会保険労務士の責務は、働く人々の心身共の健康維持のために、事業主に正しいコンプライス意識を持ってもらうことである。

本コラムをお読みの経営者の方で、職場の健全な環境づくりのご相談のある方は、是非当事務所にお問合せ頂きたい。

【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
 〒542-0066 大阪市中央区瓦屋町3-7-3イースマイルビル
 (電話)06-7739-2538 
(投稿日時点の法制度に基づき執筆しています。)