介護事業所で職員が足りない。2025年には38万人が不足し、多くの介護事業所で利用者が適切なサービスが受けられない事態が危惧されている。

そこで注目されているのが外国人技能実習制度を利用した海外人材の受け入れである。そこでこのコラムでは外国人技能実習制度について取り上げて解説する。

 

《目次》
1.外国人技能実習生は労働力か
2.労働基準法、最低賃金と外国人技能実習制度
3.介護事業所における外国人技能実習生
4.まとめ

1.外国人技能実習生は労働力か

そもそも外国人が日本で働くには27種類ある在留資格のうちいずれかを取得しなければならない。在留資格には医療、教育、企業内転勤などの就労系のものが含まれるが、技能実習は就労が目的の在留資格ではない。発展途上国への技術移転を目的として海外人材を受け入れ、わが国で実習生として技術習得を目指すのが目的である。限度は3年である。

とはいえ、実務に携わらないと技術習得に繋がらないため、わが国の受け入れ企業で実務に従事する。結果的に期間限定ではあるが、わが国の労働力の一翼を担っているのが外国人技能実習生の特徴である。

2.労働基準法、最低賃金と外国人技能実習制度

「研修生だから最低賃金が適用されないのでは?」

このような誤解があるが、外国人技能実習生にも労働基準法、最低賃金が適用される。大まかな分類は次の2つである。

①商工会議所、事業組合などを経由して受け入れる場合

受け入れ直後、2ヶ月の座学講習終了後、商工会議所、事業組合等を構成する会員企業が受け入れる時点から労働基準法および最低賃金が適用される。

②海外の関連会社から直接受け入れる場合

2ヶ月の座学講習を実施する場合は、講習終了後に労働基準法および最低賃金が適用される。座学講習を行わない場合は受け入れ初日から労働基準法および最低賃金が適用される。

つまり「研修生だから最低賃金が適用されないのでは?」との問題は2ヶ月間の座学講習期間に限った話なのである。

3.介護事業所における外国人技能実習生

平成29年11月より技能実習制度に「介護職」が追加された。冒頭で取り上げたように、

「介護サービス利用者」>「介護職従事者」

と、需給バランスが崩れるのを、外国人技能実習制度を活用して補うとの考え方である。主に東南アジアの労働者が対象になるだろう。

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4.まとめ

いずれの国においても、経済発展に伴い少子高齢化の問題が今後付きまとう。先行してこの大問題に直面しているわが国の介護技術を海外に移転することは、当該国にとってもメリットがある。外国人技能実習制度に介護職を追加することは国際的な相乗効果を生むといえる。

一方で留意しなければならないのは、実習生の労働条件および人権の保護である。不慣れな土地で不安な日々を送る実習生たちの権利保護のために、新たな取り組みが必要である。その一翼を担うのが我々社会保険労務士であるとの自覚を持って、本制度を見守りたい。

 

【この記事の執筆者】

井ノ上 剛(いのうえ ごう)
◆1975年生 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆社会保険労務士、行政書士、奈良県橿原市議会議員
タスクマン合同法務事務所 代表
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 (電話)06-7739-2538 
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